PRESS PEOPLE 

新聞社の中の人のブログです。報道の仕事をして30年。誤解されていることの多い業界のリアルを更新していきます。

人事異動はスクープ合戦2

 前回に引き続き「人事」記事の話である。

 

 毎年3月中旬から4月初めにかけ、新聞の地域面に警察官や教員などを含む地方公務員の人事異動の名簿が掲載される。大規模な自治体や警察本部になると、幹部職員だけでも紙面1ページでは収まりきらない。一般の読者にしてみれば、紙代や印刷代の無駄と感じてしまうだろう。さらにこんな記事を読むために高い購読料を支払っているのではないと、憤慨する人もいるにちがいない。

 

 開き直るわけではないのだが、たしかにお役所の人事はすべての読者にとって有益な(ためになる)情報とは限らない。ただ、知っておいて損はしない。というのも、世の中を知るうえで、あるいはこれから身の回りで起こるかもしれないことに対し、役所の人事の動きや担当セクションを知ってさえいれば、役立つ場面が出てくると考えるからだ。

 

 役所で働いている人は基本的に公務員で、彼らの給料は私たちが納める税金でまかなわれる。だから、彼らを利用しない手はないのである。それはもちろん、〝口利き〟という意味ではない。人事の記事には氏名だけでなく、担当部・課の名称がずらりと並ぶ。例えば、役所に何かを届け出る際の手続きに困ったときや諸々の苦情は、担当課がわかれば問い合わせればよい。市役所や区役所レベルならば課長クラスが応対してくれるかもしれない。

 

 一方で、土木、建設業などの事業主にとって、役所の人事を知らないでは済まない。公共工事は毎年のようにあるわけだから、幹部職員の名前と顔ぐらいは知っておくべき情報なのだろう。ただ、その付き合いの濃淡の程度が、談合などの犯罪の温床になりかねないのだが…。

 

 また、警察の人事も意外と身近である。町内会で交通安全や防犯などに関する情報交換を円滑に行うためには、近くの警察署の交通課長や生活安全課長らを知っておいた方がいいかもしれない。余談ではあるが、警察官の階級や役職を知っておくと、刑事ドラマやミステリ小説がより深く楽しめる。

 

 さらに子供がいる家庭にとっては「先生」たちの人事異動も気になるところ。掲載基準は新聞によってばらつきはあるが、校長・教頭だけでなく、お世話になった教員の転勤先がわかることもある。それはある意味で有効な情報だろう

 新聞は地方公務員の人事異動を今後も掲載しつづける。それはそれで意味がある。一方で若い記者に対しては、そうした地方公務員の異動情報を特ダネを見つけるためのツールにしてもらいたい。