PRESS PEOPLE 

新聞社の中の人のブログです。報道の仕事をして30年。誤解されていることの多い業界のリアルを更新していきます。

コロナ後の「働き方改革」

 新型コロナウイルスの感染がこれほどまで拡大し、世界中を恐怖に陥れていなければ、思い出すこともなかった。2009年5月初め、海外取材を終えて帰国した直後、2週間の在宅勤務を命じられた。いま盛んに呼びかけられている「テレワーク」である。

 その1カ月前、メキシコや米国で新型インフルエンザの流行が発生し、あっという間に全世界へと広がった。6月には、世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)を宣言した。終息宣言まで1年2カ月を要した。日本では5月中旬に初めての感染者が確認されて以来、国内の推計受診患者は約2000万人とされ、約200人が死亡した。

 忙しさにかまけていたと言い訳するのではないが、これほどの出来事にもかかわらずあまり印象にない。

 当時の新聞を引っ張り出してみると、その見出しは「自宅待機を指示」「マスクの着用求める」「休校・休講相次ぐ」「イベント中止・延期」……。

 ある中小企業の経営者は「もし社員が感染したら出勤停止にせざるを得ない。いずれ業務に不利益が出るだろう」などとコメントしていた。

 

 まさに、いま起こっていることである。

 

 感染症と人類の戦いは繰り返されてきた。天然痘にペスト、スペイン風邪、SARS(サーズ)、新型インフルエンザ、MERS(マーズ)…そして新型コロナウイルス。ウイルス。

 

 それにしても、今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、何につけても未曾有で、想定の範囲を超えている。何より命を守り、医療崩壊を招かないためにも、いわゆる「3密」(密集、密閉、密接)を避けなければならない。これを徹底しなければ社会生活などを維持できない。

 

 新聞社も「3密」を避けるため、働き方をめぐってさまざまな取り組みを実施している。特に政府による緊急事態宣言が出たあと、テレワーク、現場で取材して自宅で記事を置く「直行直帰」、対面取材の自粛などが徹底された。会議も当然,ウエブ会議やテレビ会議に切り替えた。

 

 これら取り組みは時短という意味でも効果がある。感染が終息したのち、政策的に新聞社の「働き方改革」につなげられるかもしれないのが,せめてもの救いである。