PRESS PEOPLE 

新聞社の中の人のブログです。報道の仕事をして30年。誤解されていることの多い業界のリアルを更新していきます。

新聞記者は午前3時が怖い

先日、某一流企業の広報担当を長く務めた後に人気企業の社長に就いた男性と雑談する機会があった。新聞というメディアの性質を熟知しているが故に取材対象者としては手ごわいと思う一方、むしろこうした人物がいるおかげで新聞社は生き残っていけると改めて感じた。

 

 官庁や警察、企業などで〝優秀〟とされる広報担当者は新聞記者の立ち回り方や新聞社の1日の仕事の流れをよく勉強している。そのうえで記者たちと接し、持ちつ持たれつの関係をつくっていく。記者も彼らに利用されながらも、特ダネを打つなどの「勝負時」には裏取りをサポートしてもらう。

 

 前述した元広報マンの社長もかなり優秀だったに違いない。雑談の場には入社間もない若い広報担当者の男性も居合わせた。社長は私とにこやかに会話するのだが、当然ながらその意識は若者に向けられていた。マスコミと付き合う術を伝授するかのように。

 

 その若者が「きょとん」としたのは、社長が「新聞記者は『午前3時』が最も怖い時間なんだよ」と言ったときだった。「午前3時」というのは、各新聞社の朝刊の刷り上がりが届く時間のこと。他社に特ダネを書かれたり、あるいは自社だけが落とす「特オチ」があったりすると、宿直のデスクは担当記者に直ちに連絡する。意気消沈した記者の裏取りが始まるわけだ。

 

 新聞記者にとっては当たり前のことだが、一般には理解しづらい仕事の流儀なのだろう。ただ、これは新聞記者の〝生態〟のほんの一部であり、他にもいろいろとある。そう書く自分自身も、何が〝非常識〟なのかわからないほど麻痺している。

 

 その社長は何十年にもわたり、何十人、何百人もの記者を見てきたにちがいない。記者の扱い方も知っている。もちろん、その出来不出来も。そんな人が企業のトップにいるのだから、取材する側の経済部の若い企業担当記者は大変だろうなと同情する。リーク、リップサービスの使い分けはお手のものだろうし、仮に不祥事が起きたときのガードも堅い。ま、そのために招聘されたのだろうが。

 

 一方で彼は紙媒体の新聞を大切にしてくれている。出社したら各紙を読み、自分で気になった記事は秘書にコピーさせて、参考資料として関係部署に配るのだという。

 「スマホで見るニュースはその場限りだけど、僕らの世代にとって、紙面に見出しが躍る記事は価値があり、信頼性がある」ときっぱり言う。同席した若い広報マンにも、その思いが伝わってほしい。