PRESS PEOPLE 

新聞社の中の人のブログです。報道の仕事をして30年。誤解されていることの多い業界のリアルを更新していきます。

スマホ時代の新聞稼業

 

 

スマホが私たちの日常生活に欠かせない道具になって久しい。通話やカメラ、スケジュール管理のみならず、買い物やさまざまな決済までできてしまう。さらにニュース、世の中の動きさえも次々と更新されていく。

 

 だが、新聞社に籍を置く人間のひとりとして、そうした現状に一抹の不安を抱く。

 もちろん、新聞を手に取って読んでいただきたいという思いは強い。ただ、日本人の活字離れは著しく、新聞発行部数は毎年右肩下がりで、紙の新聞離れは止められないところに来ている。今や通勤電車で新聞を広げている人は珍しく、逆にスマホでニュースを見たり、ゲームをやっている人が圧倒的に多いのだ。

 

 新聞各社は、従来の読者の紙離れを防ぐ手段を講じる一方で、これからの時代に対応するため、自社のニュースサイトを充実させてスマホユーザーの取り込むことに躍起になっている。プレゼントなど読者サービスにも余念がないようで、それはまるでひと頃の新聞拡張のための景品に似ていないこともない。

 

 ただ、新聞社にとっての主戦場が「紙の新聞」であれ、「ニュースサイト」であれ、記者のあり方、取材のやり方はこれまでと全く変わらない。まあ、速報性という意味ではスピード感は求められる。

 

 新聞が長年にわたって報道分野で信頼を勝ち得てきたのは、その取材力によるものだと思っている。一部に、思い込みや偏向でトンデモニュースが流れることもあるが、それは別の機会に書きたい。

 

 とにかく、記者クラブのなれ合いや役所の発表垂れ流し記事への批判があるにせよ、記者たちの多くは特ダネや独自連載を狙って昼も夜も駆け回っているのである。捜査機関の水面下の動きを事前にキャッチし、しっかり裏を取り、他社に先駈けて報道する。また、人脈を生かして自分だけにしか書けない連載記事を手がける。これが記者の醍醐味なのである。

 

 青臭いと思われる人もいるだろう。でも、取材に裏打ちされたしっかりした記事は新聞社ならではコンテンツだと考える。一部のポータルサイトがただ乗りで掲載したり、個人ブログにも上げられたりするわけだが、一義的にはそれでも結構。新聞社のポテンシャルが上がるわけだから。そのうえで新聞、そしてニュースサイトを読んでほしい。